龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?

「メローネの処刑は避けられない……それほどの罪を犯したことは間違いない。だが、彼女がこうなった責任は夫のぼくにもある。ゆえに、ぼくもともに処刑を…と母上に願った……そして、母上がくだされた決断が、ぼくの廃太子とメローネの国外追放。キルシェは母上が引き取るとおっしゃられたが、ヴァイスに預けることまではどうにか引き出せた。
メローネは、明日にもノプットより追放される。
身分地位すべて剥奪され、ただの罪人として…
ぼくは、そんな彼女についていく。ただの男として彼女を愛するためにね」

「兄上……」
「ヴァイス……ぼくは最初から間違っていたのかもしれない。メローネを妻としたこと…王太子となったこと。本当ならば、おまえが相応しかったのに」

王太子殿下が本心を吐露すると、ヴァイスさんはすぐさま兄の発言を否定した。

「私に、王太子など務まりません。兄上だから相応しいのではありませんか!病弱を克服し、ここまでどれほど努力されてきたのか…私は知っています。ですから、王太子を降りられるなど…止めてください」

ヴァイスさんが必死に説得しようと試みる。あたしやリリアナさんも説得をしたけれども……王太子殿下の意思は固いようで、廃嫡の決定は覆すことが出来なかった。

「皆、ありがとう。こんなぼくを思いやってくれて……けれども、もうぼくの廃嫡は正式に決まったことなんだ。キルシェが新しく王太女として立太子することになる」
「え……キルシェちゃんがですか…?まだ3歳なのに…」

思わずそう呟くと、王太子殿下はあたしの顔を見て名前を呼ばれた。

「アリシアさん」
「はい」
「キルシェは…あなたに託したい」
「え!?」

とんでもない王太子殿下の言葉に、その顔をまじまじと見てしまう。彼はほろ苦く笑うと、こう告げられた。

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