龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
「正確には、あなたとヴァイスに…だな」
「それは、一体どういった意味で…?」
あたしが理解しかねて質問すると、王太子殿下の意図を汲んだらしいヴァイスさんが代わりに答えてくれた。
「キルシェを、私とアリシアの養女に……という事ですね?」
「そうだ」
王太子殿下がヴァイスさんの言葉を肯定したということは……キルシェちゃんが王太子殿下とメローネさんのもとを離れるということ。つまり、実の両親から引き離される…?
それは、あまりにも可哀想だ。
「王太子殿下…差し出がましい言葉ですが…なぜ、ですか?キルシェちゃんをなぜ手放さねばならないのですか!?」
思わず彼女の代わりに訊いてしまった。
自分自身実の親を知らないという劣等感は、常につきまとっている。キルシェちゃんまで親と離れねばならないのはあまりに悲しい。
そう思っていたのだけど。
「……メローネは、これ以上キルシェに関わらない方がいいのだ」
やはり王太子殿下も辛くいらっしゃるのだろう。苦衷に満ちたお顔をされてらした。
「ヴァイス」
王太子殿下は弟の手を握りしめ、力強く握手をかわす。
「おまえならば、キルシェを立派な貴婦人に……そして将来の女王に育てられる。娘を…任せたぞ」
「……わかりました…必ず。お約束します」
弟の心強い言葉を聴いたそし王太子殿下は、あたしにもこうおっしゃってくださる。
「最近、キルシェの口から出るのはアリシアさん、あなた達の話ばかり。とても楽しそうでよく懐いてる様子。これならば安心して預けられます。どうか、キルシェをよろしくお願いいたします…」
「王太子殿下……」
王太子殿下はあたしにまで深々と頭を下げ、お願いをされた。
こうして、バイキング襲撃を始めとする一連の事件はほろ苦い決着が着いたのだった。