龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
エピローグ〜そして、未来へ繋がる
春、3月。
冬の終わりがようやく見えてきて、冷たい空気が緩む季節。
アプリコット城では、大わらわである準備が進められていた。
《おい、やめろ!あ…あーっ!》
「バーミリオン、とべ、とぶのだー!」
中庭でバンバン、とバーミリオンの背中を叩いているのは、4歳になったキルシェ。去年より背も伸びて少しお姉ちゃんになったけど。悪戯好きは変わらない。
「キルシェ、あんまりバーミリオンをいじめないの!」
あたしが注意すると、キルシェはぷくっと頬を膨らませていっちょ前に反論する。
「だって、お母様だってバーミリオンの背中に乗ってるんだもん!お母様だけずるいよ」
(あちゃー…キルシェを慰めるため、たまにバーミリオンに乗せてたのがいけなかったなあ…)
去年にあったバイキング襲撃事件。その他の関連事件を引き起したメローネさんは、アンテルム様とともに国外追放された。
アンテルム様からヴァイス宛に送られた手紙によると、スカイレースという北国にたどり着き、今は農地を耕しながら慎ましやかに暮らしているらしい。
地元はあたたかな人ばかりで、ようやくメローネさんも落ち着いた…と。
無事に暮していると知れただけでもよかった。
もう二度と会えないかもしれないけれども…
引き取ったキルシェを女王に相応しい立派な貴婦人に育てること。
それが、あたしたちに託された未来なんだ。