龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
「おやつ、おやつ♪」
キルシェが楽しそうにスキップしながら向かったのが、アプリコット城の誇るガーデン。
ちょうどアフタヌーンティーの時間だから、とメグが庭園でお茶とお菓子を用意してくれていた。
丸いテーブルにテーブルクロスがかけられ、ケーキスタンドにはキウリのサンドイッチやスコーン等の軽食が盛り付けられてる。
お茶は少し濃いめに淹れてもらい、ミルクティーにするのがあたしの好み。
でも、なぜか今日は鼻がおかしい。
ミルクの匂いがいつもより生臭く感じて…気分が悪くなった。
「う…」
「お母様…?」
「アリシア様、大丈夫ですか!?」
おかしい。
いつも大好きなミルクティーが、こんなに変な匂いに感じるなんて。
「お母様、お顔まっさお…大丈夫?」
キルシェがおろおろして、心配そうにあたしの顔を見上げる。いけない、娘に余計な心配をさせるなんて…。
「ん、大丈夫だよ。ちょっと変なもの食べてお腹痛くなっただけだから」
「お母様、お腹が痛いの?じゃあ、おまじない!痛いの、痛いの…とんでけー!」
キルシェは一生懸命あたしのお腹に手を当てては、何かを放り投げる仕草をする。
あたしが以前教えたおまじないだ。
親を純粋に心配する健気さに、胸が熱くなる。
と、同時に嘘をついた後ろめたさもあった。
(だけど……ほんとになんだろう。変なものでも食べたかな?)
食中毒か風邪?よくわからないけど、明日までには治さないと。