龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
故郷である辺境の地を旅立って1ヶ月経った。
ノプット王国の首都・王都バルベデにあるドラグーン城。壮麗な白亜の城を中心とする整然と区画されたなかに、王国が誇る竜騎士団の本部がある。
そこでは附属機関として次世代の竜騎士を育てるべく、竜騎士候補生たちが学び鍛え上げられる学校がある。ヴァイスさんの推薦で無事そこへ編入できたものの、初日から席が無い…なんて幼稚な嫌がらせを受けてきた。
(まぁ、別に授業は必須ではないし、あたしが楽しみなのは訓練や実戦だからね)
他の候補生たちはもっとみっちり授業を受けて学んでるけど、あたしは普段は騎竜達の住む厩舎の下働きをしてた。で、実習や訓練の時だけ出席する。
でも、実際授業に出ても知っている事ばかり。こうしてドラゴンたちと直に接していた方がためになる。
それにしても…編入初日の紹介の仕方が良くなかったんだよね、絶対。
講堂に当代唯一の龍騎士であるヴァイスさんが現れた……それだけだったら、まだよかったけど。なんかちっこい男か女かわからない子どもが現れた。そして、ヴァイスさんがよりによってこう告げたんだ。
“アリシアは私の大切なひとです。ですから、皆さんよろしくお願いいたします”
ーーなんて言うものだから、阿鼻叫喚の地獄絵図。
今の今まで女っ気がなかった皆の憧れる龍騎士が連れてきたのが、よりによって性別すらわからない外見の身分もない田舎娘。そりゃあ、妬み嫉みはすごいでしょうよ。
初日からなんか貴族令嬢らしき女の子にも、“あなた、御自分がヴァイス様に相応しいとうぬぼれてらっしゃるの?”なんてお約束の絡まれ方もされましたとも。