龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
《お、マルメじゃねーか。いただき!》
バーミリオンが目敏くマルメを見つけ、ちゃっかりと2つ両手に掴んで木の上に座る。
「あ、こら!バーミリオン!それ、頭数分しかないんだから返しなさい!」
《やなこった!アハハハ…いてっ!》
悪い子にはお仕置きで、小石を投げて手に当ててあげた。
《ひっで〜!石を投げることないだろ!》
「あんたがマルメを盗むからでしょ。後であんたにもあげたのに」
《え、まじかよ。神さま、女神さま、アリシア様!》
涙ぐんでるバーミリオンとぎゃあぎゃあやっていると、
クスクスと笑い声が聴こえて。振り向けばヴァイスさんがいた。
龍騎士の制服ではなく、白い開襟シャツと黒いスリムなズボンと皮のブーツ。ずいぶんラフな格好だった。
「おはようございます、ヴァイスさん。今日は休暇ですか?」
「おはよう、アリシア。ええ、昨日までの遠征が終わりましたからね。さすがに皆には今日一日羽根を伸ばしていただかねば」
「そうですよね。1ヶ月近い遠征でしたからね」
あたしが学校へ編入してすぐ、海沿いに海の荒くれ者であるバイキングが現れた。
船団を襲い略奪の限りを尽くした奴らは味をしめ、近くの島を根城にして襲撃と略奪を繰り返した。
島国であるノプットにとり、海路の交通や交易が途絶えることは死活問題。
だから、女王陛下のご下命で竜騎士団からヴァイスさんを隊長とした討伐隊が編成され、討伐に向かっていたんだ。