龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?

「……では、私も訓練に参加しましょうか」
「えっ!?」

ヴァイスさんが珍しく冗談をおっしゃた…と思っていたんだけど。

数時間後、本気だったと思い知ることになった。


「クエッ」
「はい、はい。すぐに終わるからね」

故郷では幼い頃から接してきたし、普段から世話をしてきたから、ヤーク達の扱いには慣れてる。

ヤークは体高2メートルほどの小型ドラゴン。緑の鱗を持ち、強靭な二本足で速く走ることを得意とする草食竜。集団で暮らす性質があり、リーダーと認めたら素直に従う従順な性格。滅多に怒らない温和さや命令を理解する知能の高さもあり、昔から騎竜の定番種だった。

馬具ならぬ竜具を頭に付けることから騎竜訓練は始まる。

「わ、わわ…!ヤークが頭を振って嫌がるんだけど」

頭絡(とうらく・頭に装着する紐の総称)の装着に手間取る男の子がいたから、アドバイスをしておいた。

「あ、それだとだめだよ。目の前にいるとヤークは威嚇されると勘違いするから、ヤークから見て左側へ回って」
「こっち?」
「うん、そう。はじめは手綱をつけてから、無口(むくち)を外して…右手で頭絡を持って…次に額革(ひたいがわ)を通す。口笛を吹きながらだとヤークの気がそれるから、その間に着けるといいよ」
「なるほど…ピィっ…こ、こうかな?」

もたつきながらもなんとか頭絡を装着できた男の子は、素直にお礼を言ってくれた。

「ありがとう!ぼくは乗馬の経験もないから苦手で…ほんとに助かったよ」
「ううん、いいよ。頭絡を嫌がる子は多いもんね。困った時はお互い様だから!」

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