龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?

青い目と栗色のボブヘアの男の子は、自己紹介をしてくれた。

「改めて自己紹介するよ、ぼくの名前はザラード。ザラード・カスタルディ。年は15歳で実家は商家さ」
「あたしはアリシア。アリシア・ブルーム。16歳だよ。よろしくね、ザラード」

初めてまともに級友と話すことができて嬉しかった。

「アリシアはずいぶんドラゴンの扱いに慣れてるんだね」
「子どもの頃からずっと一緒にいたんだ。あたしにとっては友達で、家族なんだ」

そう、おばあさま以外家族がいなかったあたしには、辺境の地にいたドラゴンやみんなが家族。大切な家族…だから、竜騎士になってそこに暮らすみんなを護りたい。

「そっか…アリシアは立派だなあ。ちゃんとした目標があって竜騎士を目指すんだから。ぼくは父さんが断念した夢を託されちゃってさ…未だに決心しないまま来てるから」

ザラードが申し訳無さそうに言うけど、あたしはそんなことはない、と言いたかった。

「別に、きっかけはなんでも…続けるうちに目標は見えてくるかもしれないじゃない?お試しとしてしばらく頑張ってみればいいと思うよ」
「え、お試し?」
「そうだよ。あたしたちはただの候補生。別に今すぐ戦場に行くわけでも、責任ある仕事を任されるわけじゃない。だから、竜騎士になるお試し期間と思えばいいよ」
「お試しか……」

ザラードの表情がいくぶん和らいで、口元に笑みが浮かんだ。

「そっか…そうだな。そう思えば気負う必要もないか。ありがとう、アリシア」
「うん」

ようやく、ザラードが笑顔になった。
編入以来ずっと思い詰めていたような顔をしていたから、なんだか気になっていたんだよね。
< 35 / 267 >

この作品をシェア

pagetop