龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
あたしもハワードに言ってやる。
「ハワード、いい加減にして。真面目に竜騎士を目指さないなら、やめたらどう?」
「はぁ?なんか言ってるけど聞こえねえーわ」
わざとらしく耳に手を当ててるけど、幼稚過ぎて馬鹿らしくなり、スルーすることに決めた。
「ザラード、行きましょ。ヤークの乗り方教えてあげる」
「う、うん」
踵を返してヤークの手綱を引くと、ザラードと一緒に訓練場に向かう。すると、いきなり肩を掴まれた。
「……待ちやがれ!この田舎娘が!!オレ様を無視するとはいい度胸……あだっ!」
勢いよく身体を反転させられたから、その勢いを利用してハワードに足払いを仕掛けたら、見事にすっ転んでくれましたね。
「誰もが自分に従うと思わないでくれる?少なくとも、あたしはあんたの言うことを聞く理由はないから」
「ぐっ…くそ!オレは伯爵家長男だぞ!パパは竜騎士団副団長だ!おまえなんぞ、いつだって王都から追い出してやることができるんだからな!」
鼻血を出したのか、鼻を押さえながら吠えるハワード。小物感たっぷりだわ。
(あ〜あ、見事な親の七光りですこと)
「別に、構わない。というか、あなたのお父様も上層部も、こんな程度の瑣事でいちいち処分するような器量の小さな方々とは思わないわ。立派な竜騎士ならばね」
あたしが憧れる竜騎士ならば、どちらか一方の言い訳だけを聴いたりはしない。自分の感情抜きで公平な判断をする…それこそが竜騎士なんだ。