龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
「“臥龍の儀”……かぁ、ぼくは自信がないなあ。でも、アリシアはもう余裕で卒業決定じゃないか?」
ザラードにそう言われたけど、あたしにはその意味がわからない。
「え、そう? あたし、まだ騎竜決まってないけど」
「だって、さっき赤い…あれ、ファイアドラゴンだろ?それに乗ってたじゃないか」
「ああ、バーミリオンのことか」
ザラードがどのドラゴンの事を言っているのか、ようやく理解できたけど。
「違うよ。バーミリオンはあたしを心配して故郷からついてきてくれただけ。大切な家族だよ」
「え、そうなの?」
ザラードが目を見開き驚くのも無理はない。今はどんな郊外に行っても、ドラゴン自体を見ることすら稀だから。
「あたしの住んでた故郷だとドラゴンは当たり前にいたから。バーミリオンは卵から孵ったばかりなのに見捨てられていたから、あたしが親代わりに育てたの。だから、年の離れた弟みたいなものだよ」
「へえ、だからアリシアはこんなにドラゴンに詳しいし、扱いも上手いんだね。そっか…アリシアにとってドラゴンは大切な家族なんだ」
初めて級友に認めてもらえて、嬉しいような、こそばゆいような。不思議な気分になる。