龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
甘いひととき
「………」
「おはようございます」
翌朝午前4時。厩舎でいつもどおりに起きた瞬間、目を剥いた。
だって。竜騎士団の専用病院に泊ったはずのヴァイスさんが、隣の馬房からひょっこり顔を出したんだから。
「ヴァイスさん!おはようございます、じゃないでしょう!なんでこちらにいるんですか!?」
「アリシアがここで寝ていると調教師の方にお聴きしましてね。どんな寝心地か試したくなりまして。藁のベッドもなかなか快適ですね」
ニコニコ笑顔でそんなことをおっしゃっていますが…。
「駄目ですよ!あなたは背中を大怪我して入院してるんですから。こんな不衛生な場所で寝ないでください!!」
あたしが当たり前のことを指摘しただけなのに、ヴァイスさんは嬉しそうに笑う。
「アリシア、私のことを心配してくださるんですね?」
「そ、そりゃあ……当たり前のことです」
「なんてあなたは優しいんでしょうか」
なにか感激したようにおっしゃいますがね…。
「心配しない方がおかしいでしょう……それより、二度とこんな無茶なことをしないでくださいよ」
あたしが強く言うと、ヴァイスさんはきょとんとした顔で「なぜですか?」とおっしゃる。
「当たり前です!あなたは龍騎士で王子殿下。しかも、背中をケガしている。こんな場所で寝るべきではありません」
本当に、しごく当たり前の答えを返した。