龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
 
結局お出かけの大半の時間はリリアナさんとのドレス選びに終始して、ヴァイスさんとの時間は少なかった。
ヴァイスさんがあたしの足ことを心配して、お店に馬車のお迎えが来たけれども。

「ヴァイスさん、靴ずれくらいで大げさですよ。もう痛くありませんし…」
「いけません。ほんの少しの傷から大病になることもあるのですよ?油断なさらないでください」
「そうはおっしゃっても……故郷じゃ大抵“つばつけりゃ治る”でやっていたんですがね……」

なんだかヴァイスさんは過保護すぎるし、心配性だ。
さっきの靴ずれだって、最悪その辺にある薬草を潰して貼れば済む話だったのに。わざわざ薬屋に行ってまで軟膏を買ってきたんだから。
靴だって負担がないサンダルまで。
それに、ティーハウスでは、あたしの体調や痛みにぴったりなブレンドのハーブティーが出てきた。あれは、絶対ヴァイスさんの注文してくれていたんだろう。

「でも……ハーブティーや治療や靴のこと……本当に助かりました。ありがとうございます」

きちんとお礼をしてないことに気づいて、遅まきながら彼にお礼を言ったんだ。

「いえ…アリシアが疲れていても、私は何もできなくて歯がゆかったのです。今日で少しでも疲れが取れたなら、よかった」

そう微笑むヴァイスさんの優しい眼差しは、心底あたしを案じるもので。
ドキドキとまた心臓が早鐘のように鳴ってしまう。

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