龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?


《うめ、うめえ!》
「あー!バーミリオン、なに食べてんの!」

ドラゴンのごはんから取り除いたウゴルは岩場の別の場所に集めておいたけど、目敏く見つけたバーミリオンがほぼ食べ尽くしていた。

《よお、アリシア。ウゴルこんなにあるなんて、パーティーでもあるのか?》
「そんなわけないでしょ。バーミリオン、ウゴルどれだけ食べたの。食べすぎだよ!」

あたしが怒っても、岩場に座って両手にウゴルを持ったバーミリオンは、シレッと手元にある果実をかじる。

《んぐんぐ……ウゴルの毒はファイアドラゴンには無効って知ってんだろ?オレ様が処分してやってんだよ》

大きな口を果汁でベタベタにしてたら、説得力ないんだけど。確かに、ウゴルの毒はなぜかファイアドラゴンにだけは効かない。だからバーミリオンにとって今は好物食べ放題の天国だ。

《それにしても珍しいな。ウゴルってあんま食えねえだろ?なんかイベントでもあるのか?》

ウゴルを口の中に放り込んだバーミリオンが出した疑問は、あたしの中で膨らんだものと同じ。
南国のウゴスタダ大公国原産のウゴルは、かの国でないと栽培できない貴重な果実。当然、高額になる。
しかも、ノプットからは船で何ヶ月もかかる遠い国だ。船便で運ぶ間も持つ貴重な果実だけど、だからこそなお高くなる。
手のひらに載る果実1個で、およそ1000サラン。
国民が1日かけて稼ぐ賃金相当の値段がつく。

そんな高級な果実を、こんな大量に誰が輸入したんだろう?
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