龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
「アリシア様!またこんなに土まみれになって…年頃の女の子でしょう」
(あちゃー、メグに見つかった)
こっそり裏庭から戻ったのに、目敏い侍女の目は誤魔化せなかった。
ぶつぶつ言いながらも、メグはあたしを温泉に放り込んで着換えを用意してくれる。
ラフな格好を好むあたしに合わせて、ちゃんと動きやすい機能的な服が準備してあった。
朝ごはんはヴァイスさんとあたしが揃ってから始まる。
食堂に置かれた重厚な長いテーブルと椅子に、磨かれた銀の燭台。どれも歴史を感じさせる使い込まれた逸品。テーブルには真っ白なクロスがかけられ、専用の料理人が作った料理が運ばれる。
基本的に朝は温野菜サラダとパンとスープにチーズ。果物。たまにソーセージや卵料理くらい。
ヴァイスさんがあたしに合わせてシンプルな食事にしてくれた時は少し嬉しかった。
「アリシア、今日はヤークに乗り騎射する訓練でしたね?」
「ふぁい」
もぐもぐとパンを口いっぱいに頬張っていると、いきなりヴァイスさんが話しかけてきて、うまく返事できなかった。
「ふふ、可愛らしいですね。慌てなくていいですよ。私はいつまでも待ちますから」
嬉しそうに微笑むヴァイスさん……
一体どういう趣味なんですか!?
「今日でわかるでしょう。あなたの騎乗技術の素晴らしさを。おそらく他の候補生はヤークに乗った時、弓を射ることすら難しいはずです」
ヴァイスさんが意味不明なことを告げてきた。
あたしにとって騎射は簡単すぎて、皆初めてでも楽勝だと思うんだけどね。