龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
ふう、と息を吐く。
竜騎士団の訓練場で構えた弓の弦を引き絞り、ただ一点のみ見つめて集中する。
(今!)
放った矢はまっすぐ一直線に飛び、目標のカカシに突き刺さった。
「うーん…まだまだだなぁ」
カカシまで歩いて確認すると、一応目的の点には刺さっているけど……自分の腕の悪さには、ため息しかつけない。
「よし、もう一度!」
もう一度矢をつがえようとすると、後ろから足音が聴こえてザラードに声をかけられた。彼はすでに訓練着であるシャツとズボンにショートブーツ、レザーアーマーを身につけてる。
「おはよう、アリシア。もう来て自主練?熱心だね」
「おはよう、ザラード。うん、あたしあんまり弓が得意じゃないからね」
「えっ!?」
ザラードはどうしてか小走りでカカシに近づくと、あたしが射った矢をじーっと眺める。
「え……弓が得意じゃないって……冗談だろ?全部ど真ん中に当たってるじゃないか」
「当てるだけなら簡単だよ。だけど、力加減が難しいの。一番上はあと1ミリ浅く当てたかったし、隣は角度が深すぎる。当てる以上はちゃんと目的通りに当てたいんだけど難しいよね」
「あ、当てるだけなら簡単って……」
なぜか、ザラードが絶句してる。
「それ、正確に射抜けるならとんでもないんだけど?なんでアリシアはそんなに突き詰めるの?当たるだけじゃだめなの?」
彼からは、当然持つだろう疑問をぶつけられた。