龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
なぜか、ザラードはしばらく放心したような感じだったけど、納得したのかやがて真顔になって頷いた。
「そっか……アリシアがそんなに突き詰めるのはちゃんとした理由があるんだね」
「おばあさまには甘ったるいって言われるけど」
「いや!ぼくはすごいと思うよ。不殺を貫くのは難しいだろうけど、アリシアには頑張ってほしいと思う」
「……ありがと」
自分にとっては当たり前の考えだったけれども、ザラードに認められて少し嬉しかった。おばあさまはいつも厳しくダメ出しばかりしてきたからなあ。
照れくさくなったあたしは、ザラードが手にした弓を見て話題を変えた。
「ザラード、弓の練習に来たの?」
「ああ、うん。ぼく、あんまり得意じゃなくて…よかったらアリシア教えてくれる?」
「うん、いいよ…じゃあまず矢をつがえてみて」
「うん」
ザラードが手にした弓を構え、渡した矢をつがえる。
「あ、ザラード。まず立ち方が違うよ。両足の先は的の方を向くように、左足をもう少し開いて……背筋はまっすぐに。重心を腰の辺りにかけて」
「こ、こうかな?」
「そう。それから弓はまっすぐ垂直に構えて。矢は飛ぶイメージを想像しながら的にむけて水平に」
人に教えるのはなかなか難しいけど、自分の動作の復習にもなる。
「わ、当たった!初めて当たったよ。ありがとう、アリシア!」
ザラードはなんとか矢が的に当たるようになり、大喜び。見ていたあたしも自分のことのようで嬉しかった。