龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
「ひゃー。やっぱり難しいよ、これ」
ヤークに乗ったザラードが降参するように両手を挙げた。
「え、そうなの?」
「そうだよ!ぼくはやっとヤークの騎乗に慣れたところだから、その上弓を射れだなんてまだ無理だよ。落竜しないだけで精一杯なんだから、他の動作まで気が回るわけない」
「そうなんだ…」
他の候補生を見ても、ザラードと似たりよったり。
中には何人もバランスを崩して落竜してる。
(……ヴァイスさんが朝言ってたことは、この事?確かにみんな、弓を射る以前の問題ばかりだ)
辺境の地に居たころから、ヴァイスさんはあたしを高く評価していた。でも、おばあさまが言うとおりに大げさで過大評価だと思っていたのだけど。
こうして同年代の候補生が手こずってる現実を見ると。少し……ほんの少しだけど、ヴァイスさんの言うことは本当なのかもしれない。
でも、それならばあたしが皆に教えればいい。みんな上達すればそれだけ皆が竜騎士に近づける。
「ザラード、負けずに頑張ろう!できるまであたしが付き合うから」
「え、本当かい?助かるよ!」
あたしの申し出をザラードは喜んでくれたけれども。
「……わたくしに教授する栄誉を、あなたに差し上げますわ。光栄に思いなさい」
なぜか、ヤークに乗ったリリアナさんまでそんな事を言い出す。
「お、ずるいぞ!俺もおしえてほしいぞ」
「なら、ボクも!」
候補生のほとんどがあたしのもとに来て、キラキラした期待の目を向けてくる。
「わかりました。みんなで頑張りましょうか」
正規の訓練のあとも、ひと通りみんなの指導をする。
何時間も、何時間も。皆真剣な顔で練習する。
それだけ皆竜騎士になりたいという情熱を持っているんだ。