龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
「はっ!」
パン!と胸がすくいい音が響く。
朝8時。
あたしは竜騎士養成学校専用の訓練場で、バーミリオンに騎乗したまま騎射の訓練をしていた。
「バーミリオン、もっと上に飛んで。あの木々の間から射るから、お願い」
《ハイよ!》
バーミリオンが数度大きく羽ばたくと、ぐんぐん高度を上げていく。
的までの距離はおおよそ30m程度。
長さが数十センチのショートボウは携帯性に優れ、連射が利くのが利点。あたしの短弓は故郷からの愛用品で、辺境の地のみに生える硬い木材を組み合わせた複合弓。強度は相当ある。
弓は距離が伸びるほど、当てるのが難しい。
遠距離ほど矢はまっすぐに飛ぶわけでなく、角度をつけて的に当てる技術が必要になる。
いくらロング・ボウより射るのが簡単なショートボウでも、ザラードに話したようにあたしの技術はまだまだだ。弛むことなく練習を重ねて、より高度な技術を身に着けたい。そう願っていた。
(……今!)
梢の間から微かに見えた的を狙い、矢を放つ。空を切って飛んでいったそれは、ひとまず的に当たった。
(手応えが浅かった……これでは駄目だ)
「もう一度!次はターンを組み合わせるよ!」
《おいおい、アリシア。もうこの辺にしとけよ。オレ様がバテちまう》
バーミリオンから文句を言われ、ハッと気がつけばずいぶん日が高い。そして、すでに同級生たちが集まってきていた。
「ごめん、バーミリオン。お礼にウゴルあげるから」
《お、まじかよ!?豪気だな!》