キミとの距離が、縮まらない。

そう言って、また『澪菜』と書き始めた長谷川くん。


「あれ?この部分の書き順ってこう?」


「違うよ、こっちから。」


「ちょ、黒田さんもう一回書いて。」


そんな会話をしながら、1つのペンを交互に使って何度も『澪菜』と書いていく。


――私、この名前でよかったって思ったの、初めてかも。


気付いたら予算管理表が『澪菜』だらけになっていたので、私達は「やばいやばい」と言いながらクスクスと笑い合った。


最後は、長谷川くんが私の消しゴムを使って、綺麗に文字を消してくれた。

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