キミとの距離が、縮まらない。
お店のドアを開けると、チリンチリンと風鈴のような音が鳴った。
「すずしーぃ」
長谷川くんが、目尻を下げて気持ちよさそうな顔をしてみせる。
その顔がなんだか可愛く見えて、私は「涼しいね」と相槌を打ちながらクスクス笑った。
風鈴のような音のドアのベルを聞いて、お店の奥から、店員さんが出てきた。
「いらっしゃいませ!何にしますか?」
「俺ラムネ!黒田さんは?」
「私、レモネードにしようかな。」
「はい、1つずつご用意しますね〜。500円です。」
そう言われ、財布からお金を出そうとしたけど、長谷川くんが先に千円札を店員さんに渡してしまった。
「なんか、ごめんね…」
「いいって!俺が奢るって言ったろ?黒田さんが嬉しい時は、ありがとうって言ってもらえた方が、俺も嬉しいんだけど。」
――そっか。私って、いつも謝ってばかりかも。
「おまたせしましたー」
そう言って、店員さんに差し出されたラムネとレモネードを、長谷川くんが受け取った。
そしてそのまま、私の方を向いて「はい!どーぞ!」と言ってレモネードを差し出す。
「…ありがとう!」
ひんやりとしたレモネード。
受け取る時に、少しだけ長谷川くんの手が触れた。