キミとの距離が、縮まらない。
第3話 敵と味方
着々と文化祭の準備を進めていたある日。
その日も、みんなで放課後集まって、衣装や小道具の準備を進めていた。
私も、他クラスの企画委員との打合せを終えて、長谷川くんと一緒に教室に戻った後、準備作業に加わる。
「あ!やっべ。打合せしてた教室にペン忘れたー!とってくる!」
長谷川くんはそう言って、さっきまでいた教室に戻っていった。
そして、その後すぐに――
「黒田さーん。」
そう声を掛けられ振り向いた。
松本さんが、こっちを向いて立っている。
松本さんと一緒にいる女子は、なぜかクスクス笑ってる。
「なに…?」
私が尋ねると、松本さんは、ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべながらこう言った。
「小道具用の赤のペンキがなくなっちゃったのー。買ってきてくれない?」
「え、もう?」
ペンキは、長谷川くんが2、3日前に買い足していたはず。しかも赤色のペンキはたくさん使うので2缶買っていた。
――いくらよく使う色とは言え、無くなるの早すぎない…?
「ホントにないの?どこかに余ってるんじゃ…」
そう言っていつもペンキを置いている場所に目をやると、本当にペンキ缶が無くなっていた。