キミとの距離が、縮まらない。
「なに?やっぱりあったの?ペンキ。」
私の後ろから、長谷川くんの声が聞こえた。
いつもより低い声。
声を聞いただけで、怒っているのが伝わってくる。
松本さんがその空気感を感じ取ったのか、少しオドオドしながら話し始めた。
「は、長谷川くん…。違うの。別室に置いてあるって知らなくて、私…。」
「そんなの、しっかり探せば分かることだろ?いつもの場所に無いなら、みんなに声掛けて他の人が使ってないかくらい、確認しろよ。しかも30分で買ってこいとまで言ってさ。この前話したから、自転車でギリギリ間に合うくらいの距離って知ってるだろ?もう少し考えろよ。企画委員はパシリじゃねーぞ。」
「…ごめん。」
「…ったく、予算だって、そんなに余裕ねーんだから。今度から気をつけろよ?…じゃ、作業の続き、よろしく。黒田さん、いこ。」