キミとの距離が、縮まらない。
振り返ると、松本さんがお化け屋敷の出口から手招きしている。
わざとらしい笑い顔。
嫌な予感がして一瞬身構える。
「な、なに…?」
「ちょっと手伝ってほしーの。とりあえず来て。」
――なんだろう。
そう思いながらも、松本さんが手招きしているドアから中を見ると、いつも松本さんと一緒にいる同じクラスの女子と男子が数人いた。
中に入ると、松本さんが私の後ろでドアをガラガラッと閉めた。
暗幕で光が完全に遮られていて、あたりは真っ暗だ。
暗闇の中から松本さんの声が聞こえる。
「明日のお化けメイクの相談しててさー、黒田さんの意見を聞かせてくれない?」
「メイクの相談…?」
そう言った途端、冷たい何かが、胸のあたりにかかった。
「え!?何?」
急に、懐中電灯の光に照らし出された。
眩しくて思わず目を細める。
男子の一人が大きな懐中電灯を持って私を照らしていて、その後ろで松本さん達が私を見て笑っているのが見えた。