キミとの距離が、縮まらない。
私がウザい?
調子乗ってた?
私は、とにかく成功させたいから、やれることを精一杯やっただけで…。
蛇口から水が流れ出る音と、私が鼻をすする音だけが廊下に響いてる。
――これじゃ、教室に戻れないし、家にも帰れないよ…。
「黒田さんっ!」
声のした方に目を向けると、原口さんと山本さんが、走って駆け寄ってきてくれた。
手には「原口」と書かれたジャージとタオルを持っている。
「大丈夫!?や、大丈夫じゃないよね!?松本さん達がペンキかけたんでしょ!?もー、マジでひどい!!きーーー!」
「ちょっと、雅、落ち着きなって。」
地団駄を踏む原口さんを、いつも冷静な山本さんが静かに宥める。
でも、原口さんは我慢できない様子だ。
「これが落ち着いてられるかっての!!恵子はスッキリしたかもだけど、私が落ち着かない!私も一発お見舞いしたかった!」
「私『も』…?」
目の前で繰り広げられる話が見えなくて、原口さんに尋ねると、原口さんは私にグッと親指を立てて見せた。
「大丈夫だよ、黒田さん!校内一の長身女子・山本恵子が、最頂点から振り下ろした平手打ちで、松本さん、吹っ飛んでたから。敵はとったよ!!」
「…え!?あ、ありがと…。」
「一緒にいた他の女子も吹っ飛ばしてやろうかと思ったんだけど、みんなに止められちゃってさ。それだけが悔やまれるけどね。」
そう言って溜息をつく山本さんの横で、原口さんはフンッと鼻息を荒くしている。