キミとの距離が、縮まらない。

そして目線を松本さんから先生に移すと「言えました。言いたいこと。」と言って松本さんから離れた。


先生は頷くと「黒田達は先に戻っててくれ。もう帰っていいぞ。」と言って、教室に帰る私達3人を、ドアを開けて見送ってくれた。


教室に戻ると、殆どみんな帰宅していた。


私達3人はお互いに「また明日ね」と挨拶をして、帰路についた。


校門を目指して歩いている途中、ふと足を止める。


――長谷川くんに御礼、言いたい。


どうしても長谷川くんと話したくて、私は戻って、駐輪場で待つことにした。


下校時刻を過ぎていることもあり、もう殆ど自転車は停められていない。


何分くらい待ったか分からないけど、膝を抱いてうずくまっていると、頭の上の方から「黒田さん?」という声が聞こえてきた。


顔を上げて見上げると、リュックを背負った長谷川くんが、私を見下ろしていた。


私は慌てて立ち上がり、頭を下げた。


「長谷川くん…あの、今日は迷惑かけてごめんね。それが言いたくて…。」


「え?もしかしてそれ言うために待っててくれたの?」


長谷川くんはびっくりしたような表情で私を見ていた。


こくっと私が頷くと、長谷川くんは俯いて頭をガシガシっと掻き、私を見て言った。


「…待っててくれてありがとう。俺からも言いたいことがあるから、駅まで送ってもいい?」


「え!?う、うん…。」


長谷川くんは自分の自転車を取ってくると、私と一緒に、並んで学校を出て駅へ向かった。

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