キミとの距離が、縮まらない。
住宅街の近くを通る道。
いつもなら生徒がたくさん歩いているけど、今日はもう薄暗くなって、人通りは全くなかった。
カラカラという、長谷川くんが押す自転車の音だけが響いてる。
――話したいことってなんだろう。
そう思ってチラッと長谷川くんを見ると、すごく深刻な顔をしていた。
耐えられなくなって、私の方から沈黙を破る。
「あの、今日は本当にごめんね。本番前にこんなことになっちゃって。私がみんなと上手くやってたら、こんなことにならなかったのに…私のせいだなって…。」
「黒田さん…」
長谷川くんがびっくりしたような顔をしているけど、私はそのまま言葉を続けた。
「長谷川くんみたいに、私もみんなから好かれるような人だったら、こんな事にはならなかったかもって思ってるの。長谷川くんって、本当にすごいから…。みんなから慕われて、好かれて…。私なんか…。」
――あ、泣きそう。
ずっと堪らえていた涙が溢れ出た。
恥ずかしい。情けない。
こんな私、知られたくなかったのに…。