キミとの距離が、縮まらない。
混乱して呆然としている私に、長谷川くんは私を抱きしめたまま、話をしてくれた。
「実は、1学期の頃から気になってたんだ。最初、字がめちゃくちゃキレイな子だなって思って。学級委員だって、みんなに推薦されて引き受けてたけど、しっかりやってくれてるし。数学の答えを黒板に書いて説明してくれる時も読みやすくて、説明も分かりやすくて、すごいなって。」
――1学期の頃から…!?本当なの?
「いつも落ち着いてる感じも、俺と全然違う部分だから、尊敬してたんだ。俺と住む世界が違うなって。企画委員だって、しっかり者の黒田さんとなら、やりたいなって思ったから立候補したんだ。」
長谷川くんはそこまで話すと、少し腕の力を緩めて、私を見下ろした。
薄暗くなってるから分かりにくかったけど、長谷川くんの顔が少しだけ赤くなってる気がした。耳も赤い。
長谷川くんは、私を見つめたまま、話を続ける。
「俺とは正反対な黒田さんとの距離なんて、縮むことないと思ってたんだ。だけど一緒にいると、居心地よくて、楽しくて、意外と共通点もたくさんあったから、もっと知りたいって思った。…気付いたら惹かれてたんだ、黒田さんに。」