キミとの距離が、縮まらない。
長谷川くんを見上げると、私の言葉の続きを待ってくれている様子だった。
でも…
「…ごめんなさい。」
「えっ、黒田さん…?さっき『私も』って…言ってくれたよね?」
戸惑った表情の長谷川くん。
長谷川くんを困らせるのは辛いけど、でもこの先ずっと困らせるよりは、ずっとマシ。
「ごめんなさい。」
そう言って、私は長谷川くんから離れると、走って駅に向かった。
電車の中では、車両の隅の窓際に立って、ずっと外を眺めながら帰った。
しょっちゅう曇るメガネを何度も外して涙を拭いた。
長谷川くんが、私のこと、嫌いじゃないって分かっただけでも幸せ。
私なんかが、それ以上のことなんて、望むべきじゃない。
そんな言葉を頭の中で繰り返すと、また涙が溢れた。