キミとの距離が、縮まらない。
「え、あの人かっこ良くない!?」
「あの人から貰おうよ!」
そう言う声が聞こえて、明らかに女性客の波は長谷川くんに寄っていった。
「はーい!どうぞー!楽しんでいってくださーい!」
パンフレットを次々と渡していきながら、長谷川くんは笑顔で呼び掛けてる。
――やっぱりすごいな、長谷川くん。
私の方に流れてきていた人波がしだいに小さくなり、パンフレットを配る手が空き出すと…
「すみませーん。」
「あ、はーい!」
受付に人が来たので急いで対応する。
1時間もすると、一旦人の流れも落ち着いた。
「ふぅ、なんとか山場越えたな。」
対応が終わり、受付近くに立っていると長谷川くんが近づいてきて話し掛けてくれた。
「そうだね!お疲れさま。」
そう返した私の横に、並んで立つ長谷川くん。
さっきまで忙しかったから忘れていたけれど、長谷川くんの顔を見ると、昨日のことを思い出してしまう。一緒に並んで立ってそう考えているうちに、なんだか左半身が硬直して――。
「あのさ、昨日のことだけど…」
長谷川くんが口を開いた。
「は、はいっ!」