キミとの距離が、縮まらない。

極度の緊張状態でいる時に話し掛けられて、思わず声が上ずった。


長谷川くんは私の方を見ずに、正面を向いたままだ。


私も、長テーブルに置かれたパンフレットを取っていくお客さんを、離れた場所から2、3人、目で追う。


長谷川くんは、そのまま話を続けた。


「自分でもびっくりするくらい、我慢できなかったというか…。黒田さんが謝ることないのにって思ったら、抱きしめたくなっちゃって、思わず…。でも、突然あんなことされたら、誰でも嫌だと思うよな。…だから、ごめん。」


長谷川くんを見上げると、片手で顔を隠しながら話をしていて、表情がわからなかった。


長谷川くんの言葉を聞いた私は、思わず「嫌じゃなかったよ?」と返した。


「…え!?」


顔から手を外し、こっちを見下ろした長谷川くんの顔は、わずかに赤い。


そんな長谷川くんを見ていたら、私の顔も急に熱くなった。思わず目を逸らして、俯く。

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