キミとの距離が、縮まらない。
私は緊張を紛らわすために、さっきのミーティングで配布された『予算管理表』を見ながら話をした。
「1クラス2万。暗幕は借りれるらしいから、いいとして…」
そう話しながら、お化け屋敷の準備に必要そうなものをどんどん書き込んでいく。
「…黒田さんってさ」
「は、はいっ!」
突然話しかけられ、びっくりして顔を上げた。
一緒に管理表を覗き込んでいた長谷川くんの顔が、さっきよりもっと近くにある。
そんな状況にドキドキしていると、長谷川くんが言葉を続けた。
「…字、キレイだよな、ホント。習字とか習ってたの?」
「あ、うん。小学生の頃、6年間ずっと習字してたよ。」
「すげーな。やっぱり、そのくらい時間かけないといけないってことか…。」
「…もしかして、習字、習いたいの?」
私が尋ねると、長谷川くんが恥ずかしそうにこう言った。