キミとの距離が、縮まらない。
「…俺の字、汚いから。」
「え、そうなの!?」
「うん。この前のテストでもさ、答え合ってるのに字が汚すぎて合ってないことになってた。特に画数の多い漢字は原形が無くなる。」
「え、そんなに!?」
私がびっくりして尋ねると、長谷川くんは「ちょっと貸して」と言って、私の手に触れた。
そのまま私の手から長谷川くんの手にシャープペンシルが渡る。
手が触れた瞬間ドキドキして、一瞬で顔が熱くなった。
「黒田さんの澪菜って名前の『澪』って字、難しいよなー。書いてみていい?」
そう言うと長谷川くんは、私がちょうど首からかけている企画委員用のネームホルダーを見ながら、真剣な表情で書き始めた。
――そんな、何回もこっちを見られたら、ますますキンチョーしちゃう…。
ドキドキしながら長谷川くんの顔を見ていると、長谷川くんが「よし、書けた!どう?」と言って、予算管理表のすみっこに書いた『澪菜』の字を見せてくれた。