今日も君とアイスクリーム
「ただし、全部のアイスをただ食べれば良いっていうわけじゃない。必ずいつも好きな人の前で食べないといけないらしい」
「え?」
いつも、好きな人の前で?
「やべぇ。言ってしまった」
そう言う航の顔は、今まで見たことがないくらい真っ赤になっている。
「あの、航。その好きな人っていうのは……」
「萌だよ。俺は、今までずっと萌のことが好きだった」
うそ。航が私のことを好き?
「俺夏休み前に、萌が男と仲良さそうに街を歩いてるのを見てしまって。それで焦ってつい、こんなジンクスに頼ってみたくなった」
「あの、航。私……」
「でも、ジンクスに頼ってばかりじゃダメだよな。やっぱり自分で、好きになってもらう努力をしないと」
航が席を立つ。
「だから、萌。俺を振るのは、もう少しだけ待ってくれ」
違う。違うよ、航。私が航を振るわけないじゃない。
このままじゃダメだ。航が伝えてくれたんだから、私も勇気を出して告白しなきゃ。
「あのっ、航。私が好きなのは……航だよ」
「え?」
「あの男の子は、高校の部活の先輩。あの時は先輩の恋愛相談にのってただけだよ」
「そうだったんだ。良かった」
ホッとしたように、残りのアイスを頬張る航。
「てっきり萌は、その先輩のことが好きなんだと思ってた」
「ううん。私は昔からずっと、航一筋だよ」
「俺も、萌が好きだよ。今までも、これからも」
そうしてどちらともなく私たちは、キスをする。
航との初めてのキスは、甘い甘いバニラアイスの味がした。
【END】