想いはじける、夏。
放課後。
帰ろうとカバンを肩に掛け、教室の入り口へと向かう。
「美咲ちゃん、ちょっと待って」
入り口で私の前に立ち塞がったのは、別のクラスの男子。
廊下が少しガヤガヤと騒がしい。
「ほら、佐山がんばれよーっ」
パタパタという足音と共に聞き慣れた声がして、その声の主に肩を抱かれてやって来たのは、また別のクラスの男子だった。
私と佐山くんという男の子は教室の入り口のところで二人にされ、一緒に佐山くんを連れてきた男子と廊下で笑いながら話している大河。
佐山くん越しに見える大河は、私の下敷きでパタパタと扇いでいた。
「あー、急にごめん」
ちょっと恥ずかしそうに切り出す佐山くん。
確か・・・サッカー部で結構人気の爽やかくんだ。大河たちと一緒にいるところをたまに見かけたことがあった。
「俺、ずっと美咲ちゃんのことが好きで・・・その・・・・・・付き合ってくださいっ」
佐山くんは真っ直ぐ私を見て言った。
真剣に想いを伝えてくれている佐山くんよりも、私の頭の中を支配しているのは、佐山くん越しに見えるあいつで。