カマイユ～再会で彩る、初恋

再会

♢

「五十嵐チーフ、今日この後、デートですか？」
「へ？」
「普段はパンツなのに、珍しくスカートですし、メイク直ししてるから」
「……」
「チーフは素がいいんですから、普段からもっとお洒落して下さい。本当に勿体ないですよ～？」
「……アハハハッ、冗談でも嬉しいわ」
「冗談なんかじゃないのに…」

香港便の乗務を終え、デブリーフィングやチーフとしての業務報告書を記入し終え、更衣室で私服に着替える。

国内最大手の航空会社、全日本スカイジェット航空（略：ASJ）の客室乗務員(CA)をしている私、五十嵐(いがらし) 茜(あかね)（二十八歳）は二年前に国内線のチーフパーサーの試験に合格し、去年国際線のチーフパーサーの試験に合格した。
CAの中では結構エリート街道を突っ走っている方で、趣味や恋愛を二の次にして、仕事に打ち込んで来た結果だ。

普段は動きやすいコンサバ系の服装を好んで着ていて、同僚からはクールビューティーだと思われている。

CAなりたての若い後輩たちがメイク直しをしている横で、珍しく私もメイクを直す。

「先輩、……今日でしたっけ？」
「うん」

可愛らしく耳元に声をかけて来た彼女は、私の一つ下の後輩の夏木(なつき) 佳歩(かほ)（二十七歳）。
茜を姉のように慕い、人懐っこい性格だ。
見た目はエロ可愛いモテ女子だが、ズバズバとぶった斬るような物言いが玉に瑕で、女子からは少し敬遠されがち。
合コン好きで、将来の夢は『玉の輿に乗る』と言い切るほど、我欲を一切隠さない正直派。
そんな裏表がない佳歩に惹かれ親しくなり、今ではオンオフともに仲良くしている。

「佳歩ちゃん、ちょっと髪アレンジできる？」
「あ、いいですよ♪」