カマイユ~再会で彩る、初恋
「………せん…せぃ?」
「ん。……起きたか?」
「――――――んっぎゃぁっっっ?!!」
飛び起きるようにベッドの端へと飛び退いた。
「ななななななっ、何でっっ……」
「何でって、俺が連れ帰ったから」
「………へ?」
脳と心臓に、世界の破滅とばかりの衝撃を受ける。
寝起きだからとか、そういうレベルじゃない。
どう考えてもありえない状況に、心臓がバクバクして今にも爆発しそうだ。
「昨日のこと、覚えてないのか?」
「………」
「まぁ、あれだけ飲んでたら、記憶も飛ぶか」
いやいやいやいや、そういう問題じゃないんです。
だって私は、同級生の男子に騙されてウォッカを飲まされたり、ストレートの焼酎を飲まされたりして……。
逃げ出すように部屋を飛び出た。
あの時、佑人に助けて貰ったはずなのに……。
目の前にいるのは、上半身裸の矢吹先生。
普段は軽くアレンジするように纏められている髪が、今はサラサラ状態で額に垂れ下がっている。
けれど、絶対見間違うはずがない。
だって、口元にあるほくろが……。
――――って、さっき触ったよね?
いやいや、ほくろは百億歩譲ってノーカンにできても、上半身裸の先生に抱きついてなかった?
ごくりと生唾を飲み込む。
幾ら思い返しても、まともな答えが見つからない。
私が羽交い絞めみたいにしがみ付いていたからか。
先生は背伸びをするみたいにして立ち上がった。
「悪いが、そろそろ、隠して貰えるか?」
「………へ?」
先生の指差す先に視線を落とすと、完全に下着姿の私が……。
「んっにゃっっっっ」
人間、……絶体絶命や万事休すの時は、とんでもない声が出るらしい。