カマイユ~再会で彩る、初恋


「先生、そこの角を左に曲がった先にコインパーキングがあります」
「左ね」

仕事終わりの彼女と十八時半にイーストタワー前で待ち合わせした。
彼女をピックアップし、彼女の自宅へと向かう。
免許を持ってないという彼女は駐車場の契約していないからと、近くのコインパーキングを教わった。

「えっ……全然話と違うぞ」
「そうですか?」
「ん」

お洒落じゃないし、広くないと言ってたから、もっと狭苦しい築年数の経った木造アパートを想像してたら、普通によくあるような七階建てのマンション。
いや、ちっとも古く見えない。

けれど、セキュリティはあまりよくないかも。
オートロックではないらしい。
普通に玄関先まで行けてしまう構造だから、女性の一人暮らしを考えたら、もう少し防犯部分が厳しい方が有難い。

彼女の部屋は六階で、五つある部屋の左から二番目。
両隣りは女性の一人暮らしらしく、その点においては安心できる。

「どうぞ」
「……お邪魔します」

部屋の中はナチュラルテイストになっていて、明るめな色調だ。

「簡単なものでいいですか?」
「夕飯?」
「はい」
「いや、疲れてるだろうし、デリバリーにしないか?」
「いいんですか?」
「あぁ。先に注文だけして貰っていい?そしたら、シャワーして来ていいよ。受け取りは俺がするし」
「あっ、はい!」

スマホでオーダーして、彼女は浴室へと消えた。
室内は綺麗に掃除が行き届いていて、所々に観葉植物が置かれている。

「1LDKと言ってたから、あのドアの向こうが寝室か?」

リビング脇にあるドアに視線がいった。

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