カマイユ~再会で彩る、初恋

「じゃあ、ビール飲みますよね?」
「え?」
「この間、函館便だったので地ビールセット買って来たんです」
「っ……」

それ飲んだら、帰れないじゃん。
いや、代行頼めば帰れるんだけど……。

「本当に泊まっていいのか?」
「先生がお嫌でなければ。……ベッドは拘ってるので、たぶん大丈夫だと思います」
「え?」
「フライトで立ちっぱなしだから、安眠重視で結構高価なダブルベッドにしたんです」
「っ……」

本当にこの子は、俺の思考をぶち破って来やがる。

男に対して、『ベッド事情』を口にしたらダメだろ。
いや、口にできるくらい許せるようになったのだろうか?

違うか。
なーんにも考えてないのかもしれない。
ただ単に、『うちのベッドは拘って決めたんです!』と自慢したいだけかも。
そうだ、そうに違いない。

『お泊り』に関しても、あまり深い意味はないのかも。
俺が彼女を家に泊めるように、彼女も俺をただ自宅に泊めるだけ。
アルコールを摂取したら運転ができないということを客観的に捉えただけ。

冷やしておいたというビールとグラスが目の前に現れた。
瓶ビール六本入りで、全種類違う味らしい。
グラスに注いで、二人で利きビールすることになった。

つまみは彼女が漬けておいてくれた漬けまぐろ。
味がしっかりしみていてかなり美味しい。

「このビール、飲みやすいですね」
「苦みが少なくてさっぱりしてるな」

十年前では想像もできなかっただろうな。
大人になった彼女とこうして酒を酌み交わすだなんて。

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