カマイユ~再会で彩る、初恋

ビールはあまり飲めないと言っていたように、グラス五杯で完全にダウン。

「おい、大丈夫か?」
「……んっ」

『歯磨きする』と言って洗面所に行ったはいいが、五分経っても戻って来なくて、迎えに行ったら座り込んでいた。

「可愛すぎんだろっ」

ダメだ。
無意識に声に出てた。

「磨き終わったのか?」
「……はぃ」

敬礼のポーズみたいに手をこめかみに当て、にこりと微笑んだ。

「暴れるなよ?」

彼女を抱き上げ、寝室へと運ぶ。
やっぱり軽すぎる。
普段何食べてんだよ、マジで。

貧血で倒れる生徒を保健室に運ぶこともある。
今時の女子高生より軽いぞ。

ベッドにそっと下ろす。
寝室は既にエアコンが付けられていて、涼しくなっていた。

リビングを片付けるために戻ろうとしたら、手首を掴まれた。

「どうした?」
「……なぃでっ」
「っ……」

ゆっくりと開かれた瞳に俺が映る。
そんな風に見つめたら、襲うぞ。

「リビング片付けて、歯磨きしたら戻って来るから待ってろ」

宥めるみたいにポンポンと頭を撫でる。

『買い置きの歯ブラシ出しておきました』とビールを飲む前に言われている。
そして、ビールを飲む前にシャワーも浴びさせて貰ったし、俺が貸した服をまだ返して貰ってなかったこともあり、着替えもあった。
泊まれる状態だから、許可が出たのだろう。

リビングを片付け歯磨きをし、寝室のドアの前で深呼吸。
暴走しないようにと自分自身に言い聞かせ、ドアを開けた。

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