カマイユ~再会で彩る、初恋


初めて先生を自宅に呼んだ。
緊張を解すために買っておいたビールを開けたまではよかったけれど、結局言いたいことの半分も言えずにダウンした。

やっぱりお酒に逃げたらダメだったな。
ここぞの時はノンアルで勝負しないと痛い目をみる。

意識はある。
けれど、体が言うことを利かない。
ふわふわとした浮遊感とグラグラと揺れる視界は、完全に酔っている時のものだ。

ろれつが回らないわけじゃないんだけど、恥ずかしくて声が出せない。
こんな醜態見せるの、もう何度目だろう。

再会したあの日も、きっとこんな感じだったんだろうな。
ううん、あの日はもっと酔ってたはず。
先生を佑人と見間違えるくらい、完全に酔い潰れてたから。

いつになっても帰って来ない私を心配した先生が、洗面所に迎えに来た。
もう最悪。
緊張のあまり、突拍子もない返しをしてしまった。
なのに、先生は優しく微笑んで寝室へ運んでくれる。

先生、優しすぎますよ。
そんな蕩けるように甘く微笑んで大事そうにお姫様だっこしたら、誰だって勘違いするんだから。

ベッドに下ろし終えた先生が無言で去ろうとしたから、無意識に手首を掴んでいた。

我が儘を言う私を優しく宥め、先生は部屋を出て行ってしまった。
もしかたしたら、このまま朝を迎えるかもしれない。
私を気遣って、リビングのソファで寝るような人だ。
ううん、代行を使って帰るかもしれない。

少し経っても来なかったら、様子を見に行かなくちゃ。

自宅に誰かを泊めるだなんて、何年ぶりだろう。
千奈でさえ、ここ2年くらいは泊めてない。
朔也さんが心配して必ず迎えに来るからだ。

男の人を泊めるだなんて、初めて。
いつも先生がどんな風にしてくれているのか、思い返す。

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