カマイユ~再会で彩る、初恋


「先生、……これって」
「俺の家の鍵」
「っ……」
「茜にやるよ」
「……いいんですか?貰っても……?」
「ん、失くすなよ?」

手のひらに乗せられたのは、先生の家の合鍵。
話に聞くと、エントランス解除は暗証番号を入力するようで、エレベーターの上層階(二十階以上)の住人用の鍵らしい。
その鍵にICチップが埋め込まれていて、玄関ドアの解除もそれで出来るらしい。

鍵と共に暗証番号も教わった。
お母様の誕生日らしい。

「いつ来てもいいし、何なら引っ越して来てくれてもいいから」
「へ?」
「フフッ、冗談……でもないけど?」

クスクスっと笑う先生。
冗談なのか、本気なのか、全然分からない。

けれど、思いがけないプレゼントは、一番の宝物になった。

「さて、そろそろ寝るか」
「……(へ)?」
「何、その反応。……もしかして、期待させたか?」
「っ……」

成人した男女が、彼女の家で食事をしてお酒も飲んで、お風呂にも入り終わっていて既にベッドの中。
お互いに想いを確かめ合って、彼氏から家の合鍵を貰ったという流れなら期待して当然だと思うけど。

私ががっつきすぎてるのだろうか?
いやいや、初めて一緒に夜を過ごすわけじゃないし、前回の流れから言っても何もないだなんて誰も思わないんじゃ?

先生の反応に恥ずかしさが込み上げて来る。
揶揄われてるのか、その気がないのか。
どちらにせよ、穴があったら入りたいような状況だ。

先生の視線から逃れるように体の向きを変え、肌掛けで顔を覆った。

「ごめん、苛めすぎた。泊まるつもりがなかったから、今日は用意してなくて」

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