カマイユ~再会で彩る、初恋

一瞬、何のことを言っているのか分からなかった。
こういう事態になること自体が日常生活に無かったから。
当然、我が家に避妊具はない。

背を向けるようにして縮こまっている私を先生が優しく包み込む。

「まだ時間早いし、買って来ようか?」
「っ……」

肌掛け越しの先生の声は、ちょっと楽しんでるように聴こえた。

「だっ、大丈夫ですっ!!」
「ッ?!……無くても?」
「あ、いや……、今日じゃ……なくても…」
「……ん、そうだな」

ガバッと肌掛けから顔を出し、必死に言い訳を口にする。

『お願いします』『買って来て下さい』だなんて口が裂けても言えないし。
『しなくていいです』『無くても大丈夫』だなんて無責任すぎて言えやしない。

シャワーを浴びて、勝負下着をつけておいたけど、別に今日じゃなくても……。

「可愛いな」
「なっ……」

経験値の差なのかな。
先生は大人の余裕というのだろうか、微笑みながらおでこをこつんと当てた。

「じ、じゃあ……寝ましょうかっ!」

鼻先が触れそうなほど間近に先生の顔があって、ドキドキする。
薄明りとはいえ、こんなにも至近距離にいたら照れてる顔がバレてしまう。

恥ずかしさのあまりぎゅっと目を閉じると、耳元に温かい吐息がかかる。

「今日は可愛いのを着けてるの?」
「っっ……」

前回『下着が可愛くないから、今日はダメですっ』と拒否したのは私だ。
先生、今思い出さなくても……。

「宿泊許可が出たくらいなんだから、着けてるよな?」
「っっっっ~~っ」

自業自得状態の私は両手で顔を覆うと、

「今日は最後までしないけど、何もしないとは言ってないから」

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