カマイユ~再会で彩る、初恋


「ほっっっっっんとにッ、すみませんっ!!!」

キッチンで朝食と思われる食事を作る先生に、土下座の勢いで頭を下げる。

酔いと共に目覚めた私は、昨夜からの出来事を教わった。

カラオケ店で泥酔状態の私は、佑人と間違えて先生に倒れ込んだらしい。
しかも、カラオケ店の店内で一回。
タクシーから降りた直後に一回。
そして、先生の自宅マンションの玄関とベッドで各一回、吐いたらしい。

乗務上がりで疲れていたのもある。
いや、仕事が原因なんじゃない。

カラオケ店で、先生の腕に絡むように抱きつく同級生を何人か見たから、精神的に限界だった。
やけ酒のように煽る私に、同級生の男子が強いアルコールを次々と騙して飲ませた。
それほど強いわけでもない私は、完全にお酒に呑まれてダウンしてしまったんだ。

記憶があるのはそこまで。
戻れるなら、昨日の十九時過ぎに戻りたい。

……いや、これもアリなのかな。
だって経緯はどうであれ、こんな風に先生の家に来れて、同じベッドで朝を迎えられたのだから。

カラオケ店で吐瀉物まみれの私のことを考えて、カラオケ店から連れ出したらしい。
“もう帰る~”と連呼する私を自宅に送り届けようと思ったらしいが、自宅の場所が書かれているものが所有物の中になかったらしく、仕方なく自宅に連れ帰ったという。
運転免許も持っていないし、社員証は名前と部署名、役職名が記されているだけ。

先生を責めても仕方がない。
むしろ、自宅に連れ帰ってくれたことに感謝すべきだ。
しかも、タクシー代も支払ってくれて、服まで洗ってくれて、体まで拭いてくれたらしい。

さらに、ベッドに寝かしつけた途端に再び吐いて、シーツまで交換させたくらいだ。
土下座したくらいじゃ、到底足りない。

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