カマイユ~再会で彩る、初恋
プロポーズ


水色に住んだ空に薄い雲が流れる。
少しずつ夏の終わりを告げるような季節の移ろいを肌で感じて。

「おいっ、千奈、準備運動くらいしろよ」
「車の中で散々動かして来たから平気!」
「だとしても、少しくらいはストレッチしてから入れよ。足攣っても知らねーぞ」
「あーもうっ、相変わらず一言多いんだよ、隆は」

千奈と隆と佑人と逗子の海に来ている。
四人で会うのはあの同窓会の時以来。

佑人の車で一泊二日の海旅行と題して、少し遅めの夏休みだ。
天気がよければ九月上旬でも海に入れる逗子には、隆の家の別荘があって、これまで何度か四人で遊びに来ている。
プライベートビーチがあり、一般の海水浴の人が訪れたりしない分、ゆっくりと過ごせるここは、私達の夏限定の秘密基地のようなものだ。

千奈は久しぶりの海だからと張り切っていて、到着して直ぐに水着に着替え、海に繰り出そうとしている。
それを夫婦漫才のように隆が宥めるのが定番。
高校時代にいい雰囲気になったりもしたけれど、女遊びが激しい隆に千奈が愛想を尽かした感じだ。

「茜~っ、そんなのあと、あとっ!みんなでパパっと用意すればいいからっ!!」

BBQの準備だけしておこうと、セッティングだけし始める。

「茜、海に入らないのか?」
「う~ん、日焼けすると仕事に支障来すから、入っても少しかな」
「そっか」

本当の理由は違う。
数日前に先生が付けたキスマークがまだ消えてないからだ。
一応、水に濡れても大丈夫な上着も羽織ってるけれど、水着自体にはなれそうにない。

薄っすらと残るキスマークを今朝の時点で確認して来た。
千奈にも話してあって、上着を脱がなければ大丈夫だと言っていた。
最悪な場合、生理だと話せばいいからと。

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