カマイユ~再会で彩る、初恋
佑人の話を聞くと、お互いに両想いだったのに、いつの間にかすれ違ってしまったらしい。
「私が千奈から聞いてたのは、隆が色んな子に手を出してたからって……」
「いや、隆は高校卒業するまで未経験だったから、たぶん千奈の勘違いっつーか……」
「うそっ……」
「俺が隆から聞いたのは、千奈が他の奴に告られて、断る時に『背の高い漢気のある人が好き』って話してたのをたまたま聞いたらしくて。隆、中身は漢気あるけど、見た目は可愛い系じゃん。それすっげぇコンプレックスでさ。俺は見た目こんなんだから、あいつに羨ましがられて懐かれてるけど、あいつはずっと気にしてて」
「じゃあ、何?千奈が隆は好みのタイプじゃないって言ったと思って距離取ったってこと?」
「………そうなるな」
「何それ……」
佑人の話に言葉を失った。
高校を卒業してもずっと隆のことが好きだった千奈。
色んな人と付き合って、それでも中々気持ちが整理できなくて、凄く辛そうだった。
そんな千奈を今の彼氏の朔也さんが、無償の愛で包み込んでくれた。
もっと早くに知っていれば、未来は変わっていたのかもしれない。
「千奈が今、凄い幸せなのは分かってるから、隆も吹っ切る決心ついたみたい」
「……そっか」
私が千奈をずっと見守って来たように、佑人も隆をずっと見守って来たんだ。
隆の気持ちを知ってしまった今。
少しだけ今夜の二人のやり取りが切なく思えた。
千奈は独身最後の旅行を楽しもうとしてたけど、隆は好きな人を送り出そうとしてたんだ。
夏の終わりだからかな。
ちょっと感傷的になってしまう。
水を口に含み、再び夜空を見上げた、その時。
「茜、彼氏できた?」