カマイユ~再会で彩る、初恋
佑人の言葉にビクッと肩が震えた。
「何で、そう思うの?」
突然投げかけられた言葉に驚きつつも、無意識に聞き返していた。
「ここんとこに、キスマークついてたから」
「ッ?!」
佑人の人差し指が鎖骨のした辺りを差す。
いつの間に見られたんだろう?
海に入った時はずっと上着着てたのに……。
「ごめん、見るつもりは無かったんだけど、BBQの時にチラッと見えて」
佑人とこういう会話自体したことがなくて、何て返していいのか分からない。
相手が先生だとは気付かれてないっぽいけど、いつかは話さないとならない。
両手でペットボトルをぎゅっと握りしめる。
佑人の好意を知っているだけに、今何を口にしても後ろめたい気持ちになってしまう。
「職場の人?」
「……ううん、違う」
認めてしまった。
彼氏がいるのだと。
視界に映る佑人の顔が僅かに歪んだ。
先生に好きになって貰いたいし、佑人の優しさも手放せないだなんて、狡い女だ。
どちらかを選ばないとならないなら、私は先生の手を掴む。
それだけは、分かり切っていること。
「さっき茜の鞄の中からアイマスク貰っただろ」
「……うん」
「そん時に、何となく気付いてた」
「へ?」
「キーリングに知らない鍵が付いてたから」
「……あ」
そんなところを見られてただなんて。
キスマークは恐らく、決定打だったのだろう。
「結構長いの?」
「……ううん。最近だよ」
高校を卒業して、何人かの人と付き合って来た。
それ自体は佑人も知っている。
だけど今回のように、秘密にしているのは初めてだ。
……相手が、矢吹先生だから。