カマイユ~再会で彩る、初恋


「おはよう」
「おはようございます」

昨日は海旅行の疲れが思ってた以上にあったようで、殆ど先生と会話もせずに寝てしまった。
朝六時前に目を覚ました私は、テラスで小鳥の囀りを聞いていた。
都会では中々体験できない非日常の一コマだろうから。

「よく寝れたか?」
「はい、お陰様でぐっすりと」
「そりゃあ、よかった」

さらりと垂れ下がった前髪から覗く瞳が優しく微笑んだ。

「近くに早い時間からやってるカフェがあるから、朝食はそこにしよう」
「はい」

寝起きでも先生はかっこいい。
オジサン臭がしないし、お腹も出てない。
それにいつでもいい匂いがする。

「ん?どうかしたか?」
「いつ見てもかっこいいなぁと思って」
「男にそういうこと言うと、どんなことされても文句言えないぞ」
「先生になら、何されてもいいですよ」
「おっ、言ったな?」

燥ぐようにリビング内を走り回り、追いかけっこをするみたいに先生が追いかけて来る。
空港や機内で嫌というほどバカップルと言われるような熱々な恋人たちを見て来たが、まさか自分がそれと同じようなことをするとは思ってもみなかった。

「キャッ…」
「捕まえた」

こんな幸せな日が訪れるだなんて。
この十年耐えられたご褒美だよね、きっと。

「腹減った。食べに行くぞ」
「はぁい」

**

ログハウス調の別荘から程近い場所にカフェレストランがあり、朝七時から十九時まで営業しているという。
会社経営をされていたご夫婦で、今は息子さんに会社を譲り、隠遁生活をしているらしい。

「パンも珈琲も美味しかったです!」
「口に合ったようでよかった」

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