カマイユ~再会で彩る、初恋

「本物ですか?」
「いや、レプリカ。本物だったら、億はするからこんな風に飾っておけないだろ」
「へっ?!」
「まぁ、レプリカといってもかなり本物に近いから、これでも数十万はするだろうけど」
「……」

芸術の世界は未知すぎて怖い。
本物かどうかというのも全く分からないけれど、この絵が有名な画家のものということすら知らない私は、下手にあちこち触らないのが一番らしい。

バージンロードと呼ばれる教会の中央部分の通路は、やはり独特の空気感がある。
そこに立っただけで、神聖な者に選ばれたような気がした。

スッと手が握られる。
横に立つ先生の視線は教壇へと向けられていて、その視線がゆっくりと私へと寄こされた。

「茜は教会と神社、どっちが好み?」
「ふぇっ?………えっ?」

今の質問って……どういう意味?
言葉のままにとったら、挙式をするならどっちがいい?って聞こえるんですけど。

返答に困り固まっていると、クスっと笑った先生の手が頭に乗せられた。

「ちょっと気が早いか?」
「っ……」
「まぁ、ゆっくり考えとけ。考えるのはタダだからな」
「っっ~っ」

私の勝手な思い込みじゃなかったみたい。
急に言われても、嬉しすぎて脳内パンク状態だよ。

ついこの間再会して、ちゃんと付き合い始めたのだってほんの少し前。

小説や漫画の世界なら交際ゼロ日婚だなんてよくある話だけど、我が身にそんな異次元な世界はありえない。
禁断の世界と言われる恩師と生徒の関係性をやっと上書きしたばかりなのに。
その先を望んでもいいってこと……?

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