カマイユ~再会で彩る、初恋


コンコンコンッ。
………コンコンコンッ。

「茜、……大丈夫か?……具合でも悪いのか?」

二十二時を回り、酔いと眠気で瞼が少しとろんとして来たのもあって、そろそろ休もうという流れで、『お手洗いに行って来ます』と言って席をたったきり戻って来ない。
洗面所に行ったきり戻って来なかった彼女の姿が蘇る。

「飲ませ過ぎたか……」

ワイン二杯半しか飲んでないけれど、その時の体調によって酔いの回りは違う。

コンコンンコンッ。
再びトイレのドアをノックし、中の様子を窺おうとした、その時。
ドアノブがゆっくりと下がり、カチャッと音と共にドアの隙間から彼女が現れた。

「大丈夫か?……水でも飲むか?」

俯いたまま無言の茜。
吐き戻した後なのだろうか?
少し顔色が悪い気がする。

「とりあえず、横になった方がいいだろ。歩けるか?」

ふらつくんじゃないかと心配になり、俯く彼女の肩にそっと触れる。
すると、華奢な腕がスッと俺のシャツに伸びて来た。
恥ずかしいのか、ちょんと抓む感じにシャツが掴まれた。

「ん?……どうした?」

甘えてるのか?
おねだりするみたいな可愛い仕草。
茜でもこういうことするんだな。

「じっとしてろ」

尚も無言のままの彼女の肩と膝裏を抱えるように抱き上げると、一瞬驚いたような表情をした彼女がぎゅっと首に腕を絡めて来た。
そして……。

「ごめんなさいっ……」
「………ん?」
「……なったの」
「……何に?」
「だからっ……女の、こに…」
「……………あぁ、ん」

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