カマイユ~再会で彩る、初恋


「せんせ~いっ、後ろにはもう載せきらないかも~」
「矢吹先生の車に乗せて貰えるか、聞いてみましょう」

九月下旬の放課後。
都内のとあるホームセンターに文化祭に使うものを買出しに来た高校三年生数名と教師二人。
三年A組の担任の吉永(よしなが) 亜紀(あき)教諭(三十二歳)は、受け持つクラスの生徒と共に数台離れた場所にいる白杜の元へ。
白杜の車がSUV車ということもあり、買出しに同行して欲しいと頼んだ。

「矢吹先生」
「はい」
「すみません、この箱が載せきらなくて。先生の車に載せて貰ってもいいですか?」
「私の車も結構いっぱいなんですが」
「……どうしましょう」
「その箱だけですか?」
「どうかしら?小暮(こぐれ)くーん、載せきらないのはこれだけ~?」

数台離れた所にいる生徒に声をかけると、超特大の袋を手にして走って来た。

「この造花類がラストです」
「助手席が空いてるので、預かりますよ」
「すみません、助かります」

トランクと後部座席にパンパンに詰め込まれた状態の白杜の車。
自身の車には『絶対生徒は乗せない』と事前に話してある。
例え買出しであっても、具合の悪い生徒を送り届けるのが理由であっても。
走行中に事故にでも遭ったら取り返しがつかなくなるからだ。

体調の悪い生徒には保護者に迎えに来て貰うか、タクシーで送り届けるのが教師としての信条としている。

< 134 / 177 >

この作品をシェア

pagetop